政府主導による働き方改革の流れもあり、 RPAという言葉がメディアで取り上げられることも増えてきています。
ロボットアームやルンバに代表されるハードウェア型ロボットに対してソフトウェア型のロボット、それがRPAであり業務効率化や人件費削減ツールとして認知され始めました。
大規模なシステム開発の繋ぎとしての利用、キーボードパンチャーの代替など、既存の業務を置き換えるという視点は重要ですが、その観点だけでアイデアを出そうとすると視野が狭まりがちです。
10ある業務を2にする使い方以外に、0から1を生み出す方法も続々と事例として生まれています。
今までのRPA事例

RPAに期待される効果はよく知られたもので大きく3つあります。
- 正確性の向上
- スピードの向上
- コストの削減
つまり、RPAは人間より安く早く正確に作業を実施できます。
それゆえに新入社員に教えて出来るような業務、Excelから基幹システムへの転記をはじめ、商品コードをキーにした見積書の作成、交通費検索など、いわゆる「わざわざ人間がやるまでもない業務」が自動化案件として形になることがほとんどです。
多くの企業は人材不足の解消や人件費削減を目的としRPAの導入を決めるためこちらは自然な流れではあるものの、これらのアイデアのみでRPAを使いこなしたつもりになるのは早計です。
最新のRPA事例

具体的に0から1を生み出す業務とはどのようなものなのかという話になりますが、端的に言うと「マーケティング」です。
実際の事例を紹介しましょう。
ある動画ポータルサイト運営会社は、下記2つのビジネスモデルを展開しています。
- 一般のクリエイターから動画を提供してもらい、そのアクセスから広告費の一部を頂くプラットフォーム提供による手数料収入
- 自社で動画コンテンツを制作し、そのアクセスから広告費を頂く広告収入
後者のビジネスモデルで利益をあげるには、いかに少ない予算でアクセスを稼ぐかにかかっているのですが、予算の大部分を占めるのが役者の出演料です。
では現状役者の選定をどう行っているのかというと、ディレクターの一存です。
例えば手軽に見ることの出来るネット告知動画を作成したいという企画があったとします。
ヒカキン(日本一のYou Tuber)とミキ(お笑い芸人)の出演料が同額だったとして、普段You Tubeを見ないディレクターが指揮を執った場合、テレビでよく観るミキをキャスティングしてしまいます。
ただ提供媒体がインターネットである以上、効果が高いのは高確率でヒカキンとなるでしょう。
こういった誤った選択が長期間に渡って問題とならないのは一切数値化がされていないからです。
そこでこの企業の担当者から、「役者の人気指標」が欲しいと相談がありました。
そこで打ち合わせを重ね、最初に白羽の矢が立ったのがTwitterデータです。
ただ、安易にフォロワー数=人気指標とするとフォロワーのアクティブ率は人によってバラつきがあり信ぴょう性に欠けるため、直近1ヵ月の1ツイートあたりの平均いいね数、リツイート数、コメント数を一つの人気指標とするよう仮定しました。
ExcelのA列に役者のTwitterアカウントを入力してRPAを実行すれば、一日一回いいね数、リツイート数、コメント数の数値を取得し直近一ヵ月の推移を折れ線グラフで表示します。
これらのデータをどう利用するかはまだこれから検討を重ねる必要があるものの、例えば役者をジャンル分けし、(ガジェット、コスメ、料理、お笑いなど)同ジャンルの他アカウントとの伸びの差をクリエイターに伝えることでコンテンツ制作のモチベーションを高めたり、You Tubeで投稿しても全て自身で対応していかないといけないマーケティングの部分をこの会社が提供してあげることにより差別化に繋がり、手数料の増額に合理性を持たせたりと可能性は広がります。
何よりこのデータを利用して論理的に役者を決めた低予算コンテンツをバズらせることが出来れば、不透明な部分の多いエンタメ業界に革命を起こすことが出来ると我々は信じています。
今回の事例が上手くまとまれば同様の方法でInstaglam、Facebookといった別のSNSからのデータも収集し、回帰分析を行うことで精度を高めていく動きになるのは必然とも言えます。
RPAは単純業務を自動化するだけでなく、ビッグデータの取り扱いにも優れていることを示す事例の紹介でした。
RPAの未来

今回の事例は動画に出演する役者の選択問題ですが、将来問題提起されるのは間違いなくそんな狭い世界の話ではありません。
例えば不動産業界であればレインズとエクセルの連携によりコスパの良い物件、悪い物件の選別に利用出来ますし、食料品業界であれば新製品のSNSによるコメント集計、分析にも利用出来ます。
紹介するメリットが何もないため、こういった事例が大々的に紹介されることは少ないですが、各社水面下で確実に動いています。
過去事例を元に自社では何が当てはまるのかを考えるのがRPA成功の近道ではあるものの、そこから一歩踏み出して自分が第一人者になるという気概を持って臨めば大きな効果を生むことが出来るかもしれません。